グラフィック・デザイナー、イラストレーター、映像作家、教師と多彩な顔を持つ、ボブ・ギルの回顧展が行われている。
ボブ・ギルは、1931年ニューヨークに生まれ、1954年くらいからNYでフリーランスで活動した後、1960年に渡英。同じくグラフィックデザイナーのアラン・フレッチャー、コリン・フォーブズらとデザイン・エージェンシー「フレッチャー・フォーブズ・ギル［Fletcher/Forbes/Gill（F/F/G）］」を設立。この事務所は後にロンドンを拠点に世界中に事務所を持つデザインファーム・ペンタグラム（Pentagram）へと発展していく。
セルフポートレート
ペンを使ったラフなタッチのイラストレーションを得意とし、1枚の絵からウィットに富んだストーリーを想像させてくれる。有名な作品としては、ジョージ・ハリスンのアルバム『不思議の壁（Wonderwall Music）』のジャケットに採用された絵や、日本のデザイン雑誌「アイデア」の表紙に描かれた挿画などがある。
また、絵本も多く出版されている。グラフィカルなビジュアルと美しい色で「あなたの世界は何色ですか？」と展開される『What Colour Is Your World ?』や、「僕は亀と比べると風のように早く走ることができる。でも、車がすごく早く走るのを見る時、僕は亀より遅く感じる」といった調子で、自分が置かれた状況によって常に感じ方が変わってくることをテンポよく描いた『I Keep Changing』（現在復刻版発売中）など。シニカルでユーモアセンス溢れる絵本ばかりだ。
『What Colour Is Your World ?』
『I Keep Changing』
このイラストレーションは、1963年にロンドンで出版されたイラストレーション集『Bob Gill's New York』に掲載されているもの。ロンドン・デザイナー＆アート・ディレクター協会の第一回展でボブ・ギルが受賞したことを記念して制作された印刷物。英国を代表する印刷所「Kynoch Press」で制作され、印刷物としてもクオリティの高いものになっているという。
こちらは、『Graphic design：visual comparisons』という、アラン・フレッチャー、コリン・フォーブスと共著で仕上げられた一冊。この3人が当時のグラフィックデザインをセレクトしたもので、レイモン・サヴィニャックやミューラー・ブロックマン、ハーブ・ルバリン等当時活躍していたデザイナーの仕事が続々登場する。
今回の展覧会では、60年～70年代に発表した絵本や作品集を私家版なども含め販売。作品のセレクトは本人の意向をかなり取り入れているのだとか。
参考までに恵文社で行われた時の、この展覧会にかける意気込みが伝わるステートメントが掲げられていたので紹介したい。（下記のリンク）
デザイン会社を立ち上げ、フリーランスで本を出版し、常に時代を読んできた氏ならではの言葉。やはり重みがある。ぜひこの言葉を踏まえて作品を見ていきたい。
「ボブ・ギル展」
パージナ 東京都千代田区岩本町2-10-8
12月14日（月）～28日（月）入場無料※来場に際しては予約が必要
パージナ
東京都千代田区岩本町2-10-8
お問い合わせ：tel.03-5825-3053
Source: excite
